【プロが選ぶ今おすすめの一台】ホンダ ヴェゼルは「バリュー・フォー・マネー」なSUV!(MJブロンディ)

ホンダの小型SUV、新型ヴェゼルの販売が絶好調だ。新型車は初期受注が伸びて当たり前とはいえ、発表1カ月で3万台を突破した。

ホンダの乗用車(軽を除く)は、本来はフィットが一番売れて当然なのだが、2021年6月の登録台数を見ると、ヴェゼルは5692台で第9位。一方のフィットは3393台で16位に沈んだ。

エンジンなど、ヴェゼルの心臓部はフィットと同じ。ざっくり言えばフィットのSUV版が新型ヴェゼルなわけだが、ボディサイズはかなり大きいし、価格もぐっと高い。微妙な装備の差があるのでイーブンでの比較は難しいが、ホンダの公式サイトでセルフ見積もりを行ったところ、ともにハイブリッドFFの売れ筋グレードでの支払総額は下記のとおりとなった。

●フィット(HOME)|228万3114円
●ヴェゼル(Z)|342万8404円

その差なんと114万円! 車両本体の差は83万円ほどなのだが、ヴェゼルはつい装備を欲張りたくなって、差が広がってしまった。それにしてもまさか100万円以上お高くなるとは……。

それなのに今年6月、ヴェゼルはフィットの2倍近くも売れた。ヴェゼルには新車効果(出てすぐの新車は売れ行きが伸びる現象)があるとは言え、フィットはヴェゼルに完全に食われてしまっている。一体なぜなのか?

ズバリ、断然お値段のお高いヴェゼルの方にバリュー・フォー・マネーを感じるから――ではないだろうか。

重要なのは実際の価格の高低ではなく「お買い得感」の有無

クルマの売れ行きを決める最大の要素は「お買い得感」だ。値段が高くても、高いと感じさせない魅力があれば、そのクルマは売れる。

では、そのお買い得感は何で決まるかというと、もちろんそこには無限の要素があるが誰もが綿密に価格を比較検討するわけではないので、これまたざっくり言えば「なんとなく感じる雰囲気」ということになる。

人は見た目が9割と言われることもあるが、クルマもそれに近い部分がある。フィットとヴェゼルの価格に100万円以上の差があったとしても、2台を見比べて、ヴェゼルのほうが150万円余分に価値があると感じれば、人はヴェゼルに流れることになる。

こちらが新型ホンダ ヴェゼル。

こちらが同じパワーユニットを積むホンダ フィット。その差は歴然というか何というか。

売れているのは圧倒的にFFのハイブリッド。つまり「都市型SUVである」ということだ

発売から1カ月間のヴェゼルの受注内訳を見ると、圧倒的に売れているのは、上から2番目のグレードである「Z」(ハイブリッドモデル)で、これが76%を占めている。ヴェゼルにはぐっとお安いガソリンモデル「G」もあるのだが、こっちはたったの7%しか売れていない。

ヴェゼルを買う人は、「節約」よりも圧倒的に「奮発」を選んでいるのだ。「ハイブリッドはガソリン代が安くなるので節約では?」という意見もあるでしょうが、ガソリン代で価格差のモトを取るには長い長い年月がかかるので、ハイブリッドはやっぱり「奮発」なのである。

FFと4WDの比率は、81:19でFFの圧勝。ボディカラーはちょうど半分がホワイト系。つまり売れているのは、白いZ(ハイブリッド)のFFということになる。

ここから読み取れるのは、ヴェゼルはガチに都会派のSUVであるということだ。

4WDは、オフロードを走るとか、雨の高速をブッ飛ばすとかいう場合には有用だが、フツーに走るならまず必要ない。高価なハイブリッドシステムは選んでも、同じくやや高価な4WDは選ばないという消費行動を見ても、ヴェゼルはオシャレでスマートでエレガントで、ちょっと気分がアガる日常の足として選ばれている。

優秀な4WDシステムも用意されているホンダ ヴェゼルではあるが、圧倒的に売れているのは2WD(FF)のほう。

主に舗装路を走るのであれば、確かに4WDである必要はあまりない。

新型ヴェゼル=1980年代のハイソカー?

たとえが古くて申し訳ないが、ヴェゼルは「80年代のハイソカー」に近い存在のような気もする。

1980年代、スマートでエレガントな雰囲気を持ったトヨタ マークⅡが、狂ったように売れまくった。ボディカラーもスーパーホワイトがダントツで、ショッピングセンター(当時はまだモールという言葉はなかった)の駐車場は、どこも白いマークⅡだらけになり、どれが自分のクルマかわからなくなった。

新型ヴェゼルはそこまでの社会現象にはなっていないが、雰囲気は近い。私だってヴェゼルを見れば、適度にオシャレでスマートでエレガントで、趣味のいい、適度に見栄の張れる流行りのクルマだなぁと感じる。

ヴェゼルなら今どきっぽいし、高級そうに見えるし、周囲から「ずいぶんカッコいいクルマ買ったねー!」と言ってもらえるだろう。それは、1980年代のカローラ対マークⅡの構図そのものだ。

今日び、新車の支払総額が300万円を超えるのは当たり前。ヴェゼルが総額342万円でも、決してそれほど高くは感じない。高く感じたら売れるはずがないのだ。

ホンダ ヴェゼルはライバルと比べてどうなのか?

ではその新型ヴェゼルを、ライバルたちと比較してみよう。

ヴェゼルのライバルとしては、トヨタのC-HRはサイズも価格帯もほぼドンピシャ。日産ではキックスになる。

ヴェゼルのハイブリッドモデルの走りについてザックリ言うと、「上質で穏やか」ということになる。フィットと同じ1.5Lのハイブリッドは、フィットより車重が約100kg重いヴェゼルにはパワフルとは言い難く、アクセルを床まで踏んづけて加速すると、やや物足りなく感じる。しかし多くのユーザーの皆さんは、アクセルを床まで踏んづけることなど1年に一度あるかないかではないか? フツーに乗る限り、ヴェゼルの走りはとても上質で心地いい。見た目同様、上品な走りが持ち味だ。

車内は、フィット譲りのセンタータンクレイアウトにより、ライバルに比べても余裕がある。後席の背もたれが前に倒れるだけでなく、座面を持ち上げて、植木など背の高いものを積む際に便利な機構(チップアップ)は、ホンダ独自のもの。つまり、上品で穏やかで広くて便利。それが新型ヴェゼルというクルマだ。

トヨタ C-HRはスタイリッシュすぎてやや窮屈かも

対するトヨタのC-HRは、『攻殻機動隊』風のSFっぽいデザインで、それがウケて発表当初バカ売れした。全体のデザインバランスは素晴らしいし、ドレスアップするユーザーも多い。つまりクルマのキャラクターとして、C-HRはヴェゼルより血気盛んでイケイケである。

こちらがトヨタ C-HR。

メカはプリウスに積まれている1.8Lのハイブリッドと、1.2Lガソリンターボの2種類。ハイブリッド同士を比べると、ヴェゼルより排気量が大きい分、C-HRは加速に余裕がある。価格帯はほぼ同じだから、そこを重視するならC-HRは有利だ。

ただC-HRはクーペ的でスタイリッシュなフォルムを採用しているから、室内、特に後席は、ヴェゼルより窮屈に感じる。後席はサイドウィンドウも小さいので閉塞感があり、頻繁に後席に家族が乗る場合は、ひょっとして不満が出るかもしれない。基本的にはカッコ優先のSUVなので、もしもトヨタ C-HRに乗るなら、そのあたりは割り切るべきだろう。

日産 キックスのe-POWERは魅力だが、デザイン的な特徴が乏しい

日産 キックスは電気自動車のような走行感覚が特徴だ。これは、エンジンを発電専用にして、タイヤの駆動はすべてモーターで行う「e-POWER」という独自のハイブリッドシステムによる。アクセルを戻すだけでかなりしっかり減速してくれるので、街中ではアクセルペダルの操作だけでほとんど走れてしまう。

ただしルックスは可もなく不可もなく感じられる。ヴェゼルが上品でC-HRがイケイケなら、日産 キックスの見た目は「フツーそのもの」だ。

こちらが日産 キックス。「e-POWER」がもたらす活発な走りは、確かに魅力的ではあるのだが。

総合的に見て、ヴェゼルの上品な雰囲気と室内の広さは、ライバルに対して一歩リードしていると感じる。「見た目のカッコよさ」と「実用性」とを完全に両立させているのが、新型ホンダ ヴェゼルというSUVの強みなのだ。

執筆者
MJブロンディ(清水草一)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動。
  • <記事掲載日>2021年8月1日
  • <更新日>2021年8月1日

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