ハッチバックにセダン、ステーションワゴン、ミニバン等々。車にはさまざまなボディタイプがありますが、どうしても3列シート車を必要とする場合を除けば、今の時代は「SUV」こそが一番人気のボディタイプだといえるでしょう。
SUVの人気が高いのは、ある意味「当たり前」だとも考えられます。SUVというボディタイプは人と荷物を十分以上に積載できるにもかかわらず、ミニバンのように比較的鈍重で燃費が今ひとつなわけではなく、セダンやクーペ並み……というとやや大げさですが、まぁそれらに近いニュアンスで軽快に走ることができます。それゆえ、人気を集めないほうがむしろ不自然なのです。
で、そんなSUVのなかでも「ミドルサイズのSUV」は特に人気が高いジャンルですので、各社からさまざまなモデルが発売されています。それらはどれも魅力的ですが、もしも筆者が自分のための1台を選ぶとしたら、間違いなく「スバル クロストレック」になるでしょう。
クロストレックを選択する理由は大きく分けて3つあります。ひとつは、「そもそもSUVとしてのデキがイイ」ということ。もうひとつが「それでいて安い!」ということ。そしてもうひとつが「納期が早い」ということです。
これら3つの「スバル クロストレックを推したい理由」を以下、より詳しくご説明いたします。
【目次】
最新の車台に「史上最強のアイサイト」という組み合わせ
その前に、まずはスバル クロストレックのモデル概要を簡単にご紹介しておきましょう。
スバル クロストレックは、2022年12月に発売されたスバルのクロスオーバーSUV。ボディサイズは「ミドルサイズのSUVと呼ぶにはほんの少々小さい」というニュアンスの、扱いやすい寸法。具体的には全長4480mm×全幅1800mm×全高1575mmで、前身であるスバル XVとほぼ同じです。
基本となる車台は、クロストレックの前身に相当する「スバル XV」でも使われたスバルグローバルプラットフォームというかなり優秀な車台を、さらに高性能化させたもの。そしてそこに載るパワーユニットは、水平対向4気筒の2Lエンジンにモーターを組み合わせた「e-BOXER」というマイルドハイブリッドシステムです。スバル XVの駆動方式はフルタイム4WDのみでしたが、クロストレックでは2WDも選べるようになっています。
そしてスバル自慢の運転支援システムであるアイサイトも、同社が「アイサイト史上最高の安全性能を実現した」と誇る最新世代のモノを搭載。具体的には、より高性能となったステレオカメラに加えて「超広角の単眼カメラ」も装備したことで、例えば見通しの悪い交差点で側方からハイスピードで突っ込んでくる自転車なども、しっかり検知できるようになったのです。
ステレオカメラがより遠くまでを見通し(※図版の青色部分)、新たに搭載された広角単眼カメラがより広い範囲(※図版の水色部分)を認識する。車両後方の緑色部分はリアソナー認識範囲のイメージ。
新型スバル クロストレックのグレード構成は非常にシンプルで、標準グレードである「Touring」と、上級グレード「Limited」の2種類のみ。それぞれに、2WDと4WDの両方が用意されています。
【イイ!】イメージと動きにズレがない。だから運転していて疲れない
若干駆け足ではありましたがモデル概要をお伝えした後は、大きく分けて3つある「スバル クロストレックを推したい理由」をひとつずつご説明いたしましよう。まずは一番目の「そもそもSUVとしてのデキがいい」ということについて。
……これに関しては、本当は近隣のスバルディーラーでクロストレックの試乗車に乗ってみるのが一番なのですが、それを言ってはおしまいなので、ご説明いたしましょう。
スバル クロストレックは、ひと言でいうなら「おそろしいほど疲れない車」です。
10分間や20分間であれば、よほどひどい車でない限り「運転していて疲れた……」みたいなことにはなりません。しかし、ちょっとイマイチな車は1時間も運転しているとやや疲れますし、普通ぐらいの車であっても、2時間も運転するとさすがに疲れを感じます。
車を運転していて疲れる理由はいろいろありますが、主には「自分のイメージと、実際の車の動きがズレている場合」にドライバーは小さな違和感を覚え、その違和感の積み重なりが「疲れ」として現れます(※もちろんそれだけではないのですが、「主には」ということです)。
しかしスバル クロストレックは、前述した「絶妙にやや小さめなボディサイズ」と、さらに進化したスバルグローバルプラットフォーム、そこにひもづく足回りなどの入念なセッティング、きわめて自然でスムーズな力を発生させるe-BOXERユニット等々により、走行に関するドライバーの脳内イメージと意図が、そっくりそのまま“現実の動き”として即座に反映されるのです。
要するに「まるで自分の手足のように車を動かせる」ということですが、それを全長約4.5m、車重約1.5tの機械製品で実現させるのは「言うは易し」の世界です。多くの市販車はなかなかそうではありませんし、特に、やや背が高いボディとなるSUVでは「まるで自分の手足のような感覚で動かせる」というモデルはあまり存在しません。
しかしスバル クロストレックは――決して唯一ではなく、ほかにもあるにはあるのですが――世にも珍しい「まるで自分の手足のように動かせるSUV」なのです。
そこがこの車の一番素晴らしいところであり、「長時間運転してもほとんど疲れない」という現象の主たる理由です。
写真は上級グレード「Limited」のインテリア。
「Limited」のフロントシート。標準グレードである「Touring」とはシート表皮の素材が異なるが、どちらも医学的な知見をもとに設計された「体が揺れにくいシート」である。
もちろんそれだけではなく「優秀な新世代アイサイトがもたらす安心感」「静粛性が向上したこと」「医学的見地にもとづいて設計された『体が揺れにくいシート』の採用」等々もこの車が疲れにくい理由です。しかしいずれにせよ、長時間運転しても疲れにくいどころか「むしろ、どこまでも果てしなく走って行きたくなるSUV」であることだけは間違いありません。
【安い!】今どき総額300万円台でこれだけのクオリティを手に入れるのは至難の業
【標準グレード】
●Touring(2WD)|2,662,000円
●Touring(4WD)|2,882,000円
【上級グレード】
●Limited(2WD)|3,069,000円
●Limited(4WD)|3,289,000円
要するに「標準グレードは200万円台後半」であり、上級グレードは「300万円ちょい」ということです。ひと昔前は車両価格100万円台の普通車というのもたくさんありましたが、近年の車には先進安全装備や電子制御部品がたくさん搭載されるようになった関係で、新車価格は高額化しています。ニュアンスとしては「見た目も走りも装備内容もいい感じの中型SUVを買おうと思ったら、車両本体だけでおおむね400万円は下らない」というのが近年の現実です。
しかしスバル クロストレックは、前章で述べたとおりの素晴らしい動的質感と最新の運転支援システム、そしてまずまず高品位な内外装および装備類を有しているにもかかわらず、上級グレードの4WD車であっても300万円ちょいですし、標準グレードの2WD車で良しとするなら、車両本体価格は“わずか”266万2000円で済んでしまいます。……これは、中身の良さから考えればバーゲンプライスであるといっても過言ではありません。
もちろん車というのは車両本体価格だけで買えるものではなく、いくつかのオプション装備は付けることになるでしょうし、そのほかにも自動車税や販売店手数料などの諸費用も支払う必要があります。しかしその場合でもスバル クロストレックの支払総額は、最新世代の高機能なミドルサイズSUVとしてはかなりリーズナブルです。
「さすがにコレは絶対に必要でしょ」と思われるオプション装備を付けたうえでのスバル クロストレックの税込支払総額は、筆者の試算によれば下記のとおりとなります。
【標準グレードの2WD車で良しとする場合】
Touring(2WD)|支払総額3,255,570円
金額内訳
■車両本体価格
- Touring(2WD)
- 2,662,000円
■メーカーOP
- UA(3点装備)
- 330,000円
・ナビゲーション機能
・デジタルマルチビューモニター)
■ディーラーOP
- ETC2.0車載器
- 40,260円
- フロアカーペット ベーシック
- 33,440円
- トノカバー
- 18,700円
■諸費用
- 登録時諸費用
- 171,170円
【上級グレードの2WD車を選択する場合】
Limited(2WD)|支払総額3,479,170円
金額内訳
■車両本体価格
- Limited(2WD)
- 3,069,000円
■メーカーOP
- UG(4点装備)
- 143,000円
・LEDリヤフォグランプ
・ステアリングヒーター
・フロントシートヒーター
■ディーラーOP
- ETC2.0車載器
- 40,260円
- フロアカーペット ベーシック
- 33,440円
- トノカバー
- 18,700円
■諸費用
- 登録時諸費用
- 174,770円
標準グレードであるTouringのほうが「コレは絶対に必要でしょ」と思われるオプション装備の数が多いため、結果的に両者の価格差は小さくなります。しかしいずれにせよ「オプションと諸費用を入れても300万円台半ばぐらいでイケてしまう」というのが、スバル クロストレックなのです。
4WD車を選びたい場合は上記よりも22万円ほど高くなりますが、それでも最新世代のSUVとしては、そして前述した中身の良さから考えれば、「格安!」と評していいでしょう。
写真は標準グレードである「Touring」。Touringでは写真のとおり11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステムは標準装備ではなく、オプション扱いになる。これはさすがに「絶対に付けたいオプション装備」のひとつだ。
【早い!】今の時代、3~4カ月待ちで済むという納期の短さも貴重
最後に、3番目の推しポイントである「納期が早い」についてご説明します。
昨今、ご承知のとおり世界情勢の影響を受けて半導体不足が深刻な状況となっており、ほぼすべての新車の納期が長期化しています。超人気モデルの場合は「3~4年待ち」などということもザラにあります。そんななか、例えばスバル クロストレックとおおむね同等または同等以上の実力を有している(と筆者は思っている)ホンダ ZR-VというミドルサイズのSUVがあります。
ホンダ ZR-Vも本当に素晴らしいSUVなので、ぜひ皆さまには本気でおすすめしたいところではあるのですが、前述の半導体不足の影響を受けて現在、ZR-Vの一部グレードは本記事執筆の2023年7月時点で注文受け付け停止中です。つまり買いたくても買えない状況であり、仮に注文できるようになったとしても、納車されるのはいつになることやら、現時点ではよくわからないのです。おそらくは今から注文しても、納車は1年以上先になるでしょう。
その昔、インスタントカメラのテレビCMで「撮りたいときが見たいとき」というコピーがありましたが、車もまさにそうです。「欲しいときが乗りたいとき」なのです。それなのに1年も2年も“おあずけ”をくらってしまうとなると……いくらいい車であったとしても、なかなか買う気にはなれませんし、人様にもおすすめしづらくなってしまいます。
しかしスバル クロストレックであれば、2023年7月7日時点の工場出荷時期の目処は全グレードが「3~4カ月」ですので、昨今の車としては「非常に早い」ということができます。乗りたいと思った今、というか実際には3~4カ月先にはなりますが、乗ることができるのです。
以上のとおり新型スバル クロストレックとは、そもそもSUVとしてのデキが良く、それでいて価格は相対的に安く、しかも納期が早い――というSUVです。
「燃費はさほど良くない」という欠点もあるにはあるのですが、もしもそこが気にならないのであれば、クロストレックの検討を強くおすすめいたします。
-
執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2023年9月22日
- <更新日>2023年9月22日