トヨタ ヤリス ハイブリッドは登場から約4年が経過した今も、真っ先に検討したい「地上最強のお手頃コンパクトカー」だ!

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トヨタのコンパクトカー「ヤリス」の、特にハイブリッドモデルについては2023年3月、当時このコーナーを執筆していた自動車評論家・清水草一氏がすでに取り上げている。だがあれから1年近くがたった今も、ヤリス ハイブリッドは相変わらず「超おすすめの一台」であり続けている。

なぜならば、こんなにも走りの質が高く、燃費も抜群に良好で、それでいて安価でもあるコンパクトカーは、その後まだ現れていないように思えるからだ。

そんな「地上最強のお手頃コンパクトカー」の魅力について、筆者が実際に乗ってみて感じたことも踏まえ語っていきたい。

■清水草一(MJブロンディ)氏によるヤリスの解説記事はこちら
トヨタ ヤリスは、実は「突出した美点を持つ、ものすごくいいクルマ」だった!(MJブロンディ)

カタログ値に近い激烈低燃費をごく普通に叩き出せてしまう!

今さら過剰なご説明は必要ないかと思うがトヨタ ヤリスは、2020年2月に発売された5ドアハッチバックタイプのコンパクトカー。それまでの世代は日本国内では「ヴィッツ」と名乗っていたが、4代目へのモデルチェンジを機に、グローバルでの車名である「ヤリス」に変更された。

ボディサイズは、FF車の場合で全長3,940mm×全幅1,695mm×全高1,500mm。パワーユニットは1.5L直3ガソリンエンジンと、このエンジンをベースとするハイブリッドシステム、そして法人利用を想定した1L直3ガソリンエンジンの3種類。そしてこのハイブリッドシステムを搭載しているヤリスこそが、現時点では「地上最強のお手頃コンパクトカー」であると、筆者には思えるのだ。

現時点で地上最強であると考える理由その1は「燃費」だ。

ヤリス ハイブリッド2WD車のWLTCモード燃費は、中間グレードである「ハイブリッドG」の場合で35.8km/L。このカタログ値だけでも、類似の競合ハイブリッドコンパクトカーを大きく凌駕する相当なモノだが、ヤリス ハイブリッドのおそろしいところは、カタログ値に近い実燃費をごく普通に叩き出せてしまう点だ。

筆者は昨年末、諸般の事情により手元に自家用車がない生活を2カ月ほど送った。その間はカーシェアのヤリス ハイブリッドGを何度も何度も利用したのだが、その際の市街地での実燃費はおおむね下記のとおりだった。

●パターン1:エコドライビングはまったく意識せず、けっこう雑な運転をした場合
→27km/Lぐらい

●パターン2:エコドライビングを少々意識して運転した場合
→30km/Lぐらい

●パターン3:エコドライビングを割と真剣に意識して運転した場合
→35km/Lぐらい

車の実燃費というのは通常、どんなに丁寧な運転を心がけたところで、特に筆者が住まう東京都内の市街地では「カタログ値の7掛けぐらい」に落ち着いてしまう場合がほとんどだ。
しかしヤリス ハイブリッドは、丁寧な運転さえ心がければほぼカタログ値どおりの燃費を楽勝でマークできる。そして、けっこう雑でハイスピード気味な運転に終始したとしても、類似する小型ハイブリッド車のカタログ値に近い燃費を叩き出せてしまうのだ(下表のとおり)。

これは驚異的であると同時に、ガソリン価格が大幅に上がってしまっている今、大変にありがたいことである。

トヨタ ヤリス 日産 ノート ホンダ フィット
グレード(全て2WD) G(ハイブリッド車) X e:HEV HOME
WLTCモード燃費 約27km/L(※) 28.4km/L 29.0km/L

(※)トヨタ ヤリスの燃費は、上述した筆者の運転による実燃費の「パターン1」の数値。

写真は2024年1月にマイナーチェンジが行われる前のヤリス ハイブリッドZ。フロントグリルのデザインに違いが見られる。

ただ燃費がいいだけの車でなく、実は“走り”も最強に近い

トヨタ ヤリス ハイブリッドの驚異的なポイントは燃費だけではない。驚くほど燃費が良いにもかかわらず、驚くほど走行性能および走行フィールも優れている――という点こそが、この車が驚異的であると考える真の理由だ。

TNGAというトヨタの新たな設計思想にもとづく車台とボディはきわめて強固で、足回りの精度感も高い。そして、そこに載っている1.5Lエンジンをベースとするハイブリッドシステムは「……これ、本当に安価なコンパクトカーのパワーユニットなのか?」と疑問に思ってしまうほど、豊かでシャープなパワーとトルクを提供する。

そしてそれらの結果としてヤリス ハイブリッドを運転するドライバーは、ゆっくりと安楽に走るときも、そしてややペースを上げて走るときにも、ヤリスより1クラスか2クラス上のスポーティで上質な車を運転する際のフィーリングによく似た「高性能な機械を、自分の意のままに動かすとき特有の気持ちよさ」を感じることになるのだ。

とはいえ、ここで少々の疑問を覚える人もいるかもしれない。その疑問というのは、「ヤリスみたいなベーシックでコンパクトなお安い車は、極論をいえば『移動のための道具』でしかないので、フィーリングの良さとかはどうでもいいんじゃないの?」ということだ。

この意見は、ある意味そのとおりではある。そして実際、コンパクトカーやミニバンなどの趣味的ではない、主には実用のために使う車を選ぶ際に「走行性能および走行フィールの良さ」はさほど重要視しないユーザーも多い。

だがその行為は間違っている。いや「間違っている」というのは少々言い過ぎだが、たとえ99%または100%実用のために使う道具だったとしても、その使用フィールや性能みたいなものは、悪いよりは良いほうがベターであることは間違いないのだ。

例えばの話「仕事はお金を稼ぐことが主な目的だし、どこでだってできるのだから、作業する場所なんてどこでもいいよ。整理されていない部屋の片隅でも十分さ」という意見には、いちおうの合理性はある。

だがもしも自宅から等距離に「整理されていない部屋の片隅」と「緑あふれる心地よいオフィス」があり、そのどちらを選んでも良いのだとしたら、よほどの事情を抱えている人以外は「心地よいオフィス」を選ぶだろう。なぜならば、限られた人生の中で同じ時間を“仕事”に投下するのであれば、良い気分(フィーリング)でその時間を過ごすほうが何かとおトクであり、自身のQOL(Quality of Life)が向上するからだ。これが、コンパクトカーやミニバンなどの実用車においても走行性能や走行フィールの良さを重視すべき理由である。

余談めいた話がいささか長くなってしまったが、いずれにせよトヨタ ヤリス ハイブリッドは、超低燃費な車でありながら「超楽しい車」でもある。そこが、実に素晴らしいのだ。

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写真は2024年1月にマイナーチェンジが行われる前のヤリス ハイブリッドG。こちらもフロントグリルのデザインに違いが見られる。

これだけの高機能車でありながら、車両総額はめっぽう安い!

いくら燃費が良く、そして走りの質がきわめて高かったとしても、車両価格が高額すぎては意味がない。そんな車には人々の暮らしを支える実用車としての資格がないというか、「そりゃ無尽蔵に製造原価をかけていいなら、いいモノも作れるでしょうよ……」と皮肉りたくなるというか。

しかしトヨタ ヤリス ハイブリッドは、前述してきたとおり抜群の燃費と抜群の走行性能を有しているにもかかわらず、とにかく安い。具体的には、もっとも廉価な「ハイブリッドX(2WD)」というグレードの車両本体価格は204万4,000円なわけだが、さすがにこのグレードは装備の面で寂しい部分もあるので、中間グレードである「ハイブリッドG(2WD)」を例にすると、その価格は229万9,000円。昨今の車としてはきわめて安い部類に入る。

そしてこのハイブリッドGは、オプション装備代をさほどかけずに乗れる車でもある。

もちろん「あれもこれも」とすべてのオプション装備を付ける場合は、けっこうな額になってしまうだろう。だが筆者の見立てによれば、「さすがにこれは絶対に付けたほうがいいでしょ」と思えるGのメーカーオプションはETC2.0ユニット(VICS機能付)1万6,500円くらい。
ナビに関しては、G以上のグレードにはディスプレイオーディオが標準装備されているのでスマホナビを使うことが可能となっている。

あとはディーラーオプションの1万4,300円の「フロアマット(ベーシック)」をつければ、基本的には万事OK。すぐさま快適かつ安全に走り出すことが可能だ。レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)とプリクラッシュセーフティ(歩行者[昼夜]・自転車運転者[昼] 検知機能付衝突回避支援タイプ/ミリ波レーダー+単眼カメラ方式)は、そもそも全車標準装備である。

G以上のグレードに標準装備されているディスプレイオーディオ。スマホナビを活用可能であり、6万6,000円の「エントリーナビキット」を加えることで従来のトヨタ車載ナビとして使うこともできる。

競合にも素敵な小型車は多いが、総合力はヤリス ハイブリッドがNo.1か

「低燃費で、なおかつ走行フィールも良好なコンパクトカー」には、トヨタ ヤリス ハイブリッドのほかに日産 ノートという選択肢もあり、そちらもかなり素敵な車だ。燃費はヤリス ハイブリッドのほうが上だが、走行フィールの良さと走行性能の高さはおおむね伯仲しており、内外装(特にインテリア)のデザインセンスは、日産 ノートのほうが明らかに優れているだろう。

しかし2024年1月26日にマイナーチェンジを受けた新型ノートの「X(2WD)」というグレードは、車両価格こそヤリス ハイブリッドとさほど変わらない229万9,000円だが、実際はそこに46万2,000円をプラスして「プロパイロット」を含むパッケージオプションを付けることになる場合が多い。

もちろん「プロパイロット付きの日産 ノート」は、それだけの総額になっても買う価値は十分にある素晴らしいコンパクトカーだが、「総額としての安さ」のみで言うのであれば、ヤリス ハイブリッドの敵ではないのだ。

またそのほかの競合を見ると、例えば新型スズキ スイフトは上級グレードでもヤリスのハイブリッドGとほぼ変わらない価格であるという安さが魅力だが、フルハイブリッドではなくマイルドハイブリッドゆえ、燃費の点ではヤリス ハイブリッドには敵わない。

そして海外勢ではフランスのプジョー 208などもかなり魅力的なコンパクトカーで、走りもかなりバツグンだが、車両価格は「アリュール」というベーシックなグレードでも300万円を軽く超える。価格の次元が1つないし2つ違うという意味で、ヤリス ハイブリッドとは別種の車といっていいだろう。

写真は2024年1月にマイナーチェンジが行われる前のトヨタ ヤリス

まとめ

以上が、冒頭付近で申し上げた「現時点ではトヨタ ヤリス ハイブリッドこそが地上最強のお手頃コンパクトカーである」と、筆者が考える理由だ。

同じクラスの他車種と比べると少々スマートさに欠けるインテリアデザインが個人的には欠点と感じるものの、もしもそこが気にならないのであれば、そして車に多人数は乗せないし、大きな荷物を載せる予定も特にはないというのであれば――2020年2月に発売されたトヨタ ヤリス ハイブリッドは、4年経った今もなお真っ先に検討してみるべきコンパクトカーである。

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執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2024年3月27日
  • <更新日>2024年3月27日
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