【人気車ヒットの理由】実用性の高さとお手頃なプライスで大人気に!「トヨタ ルーミー」

ジャンルを問わず「人気商品」には、人気を博すだけの理由=良いところが必ずあるものです。そしてそれは「車」においても同様で、大ヒットしている車にはほぼ必ず、ヒットするだけの理由=美点があります。

このコーナーでは「今、かなり売れてる車」1車種をピックアップし、その「売れてる理由」を明らかにしてまいります。

第4回となる今回は、今年上半期(1~6月)の累計販売台数がトヨタ ヤリスに次ぐ第2位となったコンパクト・ハイトワゴン「トヨタ ルーミー」です。

2種類の1L 3気筒エンジンを積むダイハツ トールの姉妹車

2種類の1L 3気筒エンジンを積むダイハツ トールの姉妹車

まずはトヨタ ルーミーという車についての簡単なおさらいから。

トヨタ ルーミーは、広々とした空間「Living」と、余裕の走り「Driving」を掛け合わせた「1LD-CAR」をコンセプトとする小型ハイトワゴン。ダイハツの「トール」とは姉妹車の関係にあたります。

ボディサイズは全長3725mm×全幅1670mm×全高1735mmとコンパクトですが、室内空間は広々としていて、最小回転半径4.6mと小回りが利く車でもあります。後部座席にはワンタッチオープン機能付きパワースライドドアを採用しています。

パワーユニットは1Lの3気筒自然吸気エンジンのほか、パワフルな1L3気筒ターボエンジンも設定。トランスミッションは全車CVTです。

先進安全装備は当初からそれなりに充実していましたが、2020年9月のマイナーチェンジを機に、全車に標準装備される予防安全機能「スマートアシスト」の機能がさらに向上。一部のグレードには全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロールも搭載されました。

同門の姉妹車「タンク」の廃止で販売台数が激増

同門の姉妹車「タンク」の廃止で販売台数が激増

そんなトヨタ ルーミーは今、冒頭で申し上げたとおり非常によく売れています。今年1~6月の販売台数はトヨタ ヤリスに次ぐ2位ですが、ヤリスの数字はSUVである「ヤリス クロス」との合算ですので、モデル単体で見るならば「ルーミーこそが売れ行きナンバーワン」だったりするのです。

ルーミーの販売台数が非常多い理由のまず一つめは、身もフタもない話ではあるのですが、2020年9月に姉妹車の「トヨタ タンク」が廃止されたということです。

それ以前は「トヨタ店」と「トヨタカローラ店」がルーミーを販売し、「トヨペット店」と「ネッツ店」がタンクを販売していました。しかし2020年5月以降はすべての販売店ですべてのトヨタ車が買えるようになったため、「姉妹車」は不要になりました。そのためトヨタは、販売台数が相対的に少なかったタンクを廃止。その結果として需要がルーミーに集中し、その販売台数を大きく伸ばす結果となったのです。

ダウンサイズ」にも「アップサイズ」にも向いている好都合な立ち位置

ダウンサイズ」にも「アップサイズ」にも向いている好都合な立ち位置

ボディサイズの割に広々としている室内空間。後部座席のドアはワンタッチオープン機能付きのパワースライドドア。


以上は、トヨタの販売政策変更に伴う身もフタもない理由ですが、当然ながらルーミーという車に「魅力」があったからこそ、今に至るまで激しく売れ続けているわけです。

ではトヨタ ルーミーの魅力とは何かといえば、「ダウンサイザーにとってもアップサイザーにとっても“ちょうどいい”一台である」ということでしょう。

ファミリー層の自動車ユーザーというのは3列シートのミニバンを選ぶ場合が多いものですが、子育て期間が終わると、わざわざ3列シートの車を選ぶ必要性が薄れ、自家用車のダウンサイジングを考えるようになります。

そのとき、「とはいえ軽自動車には乗りたくないし、リッターカークラスの小型ハッチバックもちょっと小さすぎるなぁ……」と考えるユーザーにとって、トヨタ ルーミーぐらいの車――すなわち、やや小ぶりだけど室内は広く、荷物も普通以上に載せられる車は、「ダウンサイズ先」として非常に都合がいいのです。

またルーミーは「アップサイズ先」としても好都合な車です。

軽のスーパーハイトワゴンを使っている3人家族に子どもが1人増えると、さすがに軽では若干手狭になるため「もう少し大きい車に替えたい」と考えるようになります。その際、トヨタ ヴォクシーなどの5ナンバーサイズミニバンにアップサイズしてもいいのですが、「あそこまでの大きさや、3列のシートはいらない」と考えるファミリーも多いものです。

そういったアップサイザーの受け入れ先としてちょうどいい車、つまり「大きすぎず小さすぎずで、荷物がたくさん積めて、スライドドアを採用している車」というのは今、トヨタ ルーミーとスズキ ソリオを中心に、それらのOEM生産車で占められています。そのため、そういったアップサイザーの選択肢としてトヨタ ルーミーは圧倒的な人気を博しているのです。

ルーミーには標準車のほか、押し出しの強いフロントグリルとエアロ一体型フロントバンパーなどが付いた「カスタム」もラインナップされています。


ここでひとつ疑問に思うのは、「なぜスズキ ソリオではなくトヨタ ルーミーなんだ?」ということかもしれません。

それはもうおっしゃるとおりで、スズキ ソリオも比較的よく売れていますし、車自体の出来としては正直、ルーミーよりもソリオのほうが上かもしれません。

しかし「ブランドイメージ」や「サービス拠点数の違い」などの理由で、どうしてもトヨタのルーミーのほうが断然よく売れる――というのが現実なのです。

なんといっても価格がお手頃!

なんといっても価格がお手頃!

シンプルなれどなかなかシックなトヨタ ルーミーの運転席まわり。写真は売れ筋グレードの「G」。


まぁスズキ ソリオとの比較の話は別として、トヨタ ルーミーが売れているもうひとつの理由は「価格がお手頃だから」ということです。

ルーミーの価格は155万6500円~204万6000円とそもそも手頃ですが、超売れ筋の中間グレードである「G」の2WDだけでいうと、その車両価格は174万3500円と、最近の車としてはきわめてお手頃です。

これは、どうしても高くついてしまう「ハイブリッド」の採用をいさぎよくあきらめ、安価に作って安価に販売できる「3気筒ガソリンエンジン」だけを採用することで実現できた価格です。このあたりの値付け戦略も、トヨタ ルーミーという車が大ヒットした理由であることは間違いありません。

以上のとおりトヨタ ルーミーは、

・程よく小ぶりで
・でも室内はとっても広くて
・小回りが利いて
・ごく普通に走れて
・シートアレンジや荷室の使い勝手も良好で
・価格も安い

ということで大ヒットに至りました。車を、偏愛の対象ではなく「移動や運搬の手段」と考えるなら、たしかにこれ以上便利で手頃な車はそうあるものではありません。便利で安価な“道具”を探している人には、大いにおすすめできる一台です。

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
  • <記事掲載日>2021年9月1日
  • <更新日>2021年9月1日

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