【同クラス人気車対決】ちょうどいい高さ+スライドドアのベストバイは?「スズキワゴンRスマイル vs ダイハツ ムーヴキャンバス」

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ものすごく背が高い、スライドドアを採用している軽自動車=軽スーパーハイトワゴンは非常に便利な乗り物であり、便利であるがゆえに今、大変よく売れています。

しかし「主に1.8m前後となるほどの圧倒的な背の高さはいらない。でもそれなりの背の高さは必要だし、後席のスライドドアも、やっぱりあったほうがいい」と考える人も、実はけっこう多いものです。

そう考えるユーザーのために存在している車が、つまり「ちょうどいい背の高さのスライドドア付き軽自動車」が、2016年にダイハツが発売した「ムーヴ キャンバス」と、その後を追う形でスズキが2021年に発売した「ワゴンRスマイル」です。

どちらもそれぞれナイスな軽ハイトワゴンですが、この2台はカブる部分もかなり多いため、「……自分にはどちらが向いているのだろうか?」と迷ってしまうこともあるかもしれません。

もしも迷った場合は、どちらをどう選べばいいのでしょうか? さまざまな観点から、両者を比較してみることにしましょう。

【ラウンド1:どっちが売れている?】実数は不明だが、推定月販台数は大差なし

まずは「今、実際どちらが売れているのか?」というデータを見てみましょう。

……とはいえ日本自動車販売協会連合会が発表しているデータでは、「ダイハツ ムーヴシリーズ全体」と「スズキ ワゴンRシリーズ全体」の数字しか見ることができず、ムーヴ キャンバス単体とワゴンRスマイル単体の販売台数は公表されていません。

ということで、ラウンド1の結果は「不明」ということになるのですが、シリーズ全体の販売台数と、それぞれの「販売目標台数」などをベースに筆者が独自推計したところによれば、2022年1月の販売台数は、

・ダイハツ ムーヴ キャンバス=4800台ぐらい
・スズキ ワゴンRスマイル=5000台ぐらい

という計算結果になりました。この数字がどれだけ正確かはさておき、両者の売れ行きは「おおむね同じぐらい」とは言えるはずです。

【ラウンド2:どっちの使い勝手が良い?】より背が高く、荷室もフラットになるワゴンRスマイルが僅差で優勢

お次はボディサイズや車内の広さ、使い勝手などを比較してみましょう。まず、両者のボディサイズは下記のとおりです。

●ダイハツ ムーヴ キャンバス|全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mm
●スズキ ワゴンRスマイル|全長3395mm×全幅1475mm×全高1695mm

両者との軽自動車規格であるため、車体寸法は「ほとんど同じ」といえますが、強いていうと「ワゴンRスマイルのほうが若干(4cm)背が高い」とは言えます。

スズキ ワゴンRスマイルのキャビンスペース。

こちらはダイハツ ムーヴ キャンバス。

室内寸法はどうでしょうか?

●ダイハツ ムーヴ キャンバス|室内長2115mm×室内幅1345mm×室内高1285mm
●スズキ ワゴンRスマイル|室内長2185mm×室内幅1345mm×室内高1330mm

ワゴンRスマイルのほうがホイールベース(前後の車輪間の距離)がやや長いことと、前述のとおり4cm背が高いため、数値上は「ワゴンRスマイルの室内のほうがやや長く、やや高い」ということになります。

とはいえ室内長の計測方法はメーカーによって微妙に異なるため、実際の体感としては「室内の広さはだいたい同じぐらい」というのが本当のところです。

ただ、比較するとワゴンRスマイルのスライドドアのほうが開口部が若干広く、またステップ高も若干低いため、「後席への乗降性」は、スズキ ワゴンRスマイルのほうがやや有利です。

開口部が広く、リアのステップ地上高が低めなワゴンRスマイルのスライドドア。

ムーヴ キャンバスのスライドドアも便利ではあるが、ワゴンRスマイルと比べると開口部は少々狭めとなる。

お次、「荷室のサイズ」はどうでしょうか?

●ダイハツ ムーヴ キャンバス|開口部地上高650mm/開口高875mm/開口幅最大1060mm/後席使用時の奥行き330~580mm/幅885mm/天井高875mm/後席格納時のフロア長1110mm
●スズキ ワゴンRスマイル|開口部地上高695mm/開口高855mm/開口幅最大1000mm/後席使用時の奥行き280~450mm/幅900mm/天井高900mm/後席格納時のフロア長1275mm

……大量の数字の羅列となってしまい恐縮ですが、まとめると「重い荷物の出し入れする際に重宝する荷室のフロア高の低さ」と「後席格納時の奥行き」はムーヴ キャンバスがやや優勢。ラゲッジスペースの開口幅と天井高、後席格納時のフロア長ではワゴンRスマイルがやや優勢――ということです。

また後席格納時は、ムーヴ キャンバス。ワゴンRスマイルは後席部分に若干の角度が付いてしまいますが、ワゴンRスマイルはほぼフラットになります。

後席を倒せばほぼフラットになるワゴンRスマイルに対し、ムーヴ キャンバスは写真上のとおり、やや角度が付いてしまう。

【ラウンド3:走行性能と燃費は?】走行性能はほぼ互角と言えるが、燃費性能はワゴンRスマイルが上

お次は「走行性能」です。

用意されるパワーユニットは両者ともノンターボエンジンのみで、ダイハツ ムーヴ キャンバスは最高出力52psの直列3気筒。スズキ ワゴンRスマイルは同49psの直列3気筒ですが、中間グレード以上にはモーターがエンジンを少々アシストするマイルドハイブリッド機構が備わっています。

両者の力感はおおむね同程度で、どちらも「都市部でお買い物などに使うには普通に十分」であり、そしてどちらも「しかし山道などを走るにはパワー不足」といったニュアンスです。

そのうえで比較しますと、乗り心地の良さや静粛性などは、やはり設計が約5年分新しいワゴンRスマイルのほうが若干上です。前述した山道や高速道路では非力さや足回りの柔らかさが目立ってしまうのですが、市街地の一般道をごく普通の速度で走る限りにおいては、スズキ ワゴンRスマイルの乗り味は「なかなか上質」とすら評価できます。

なおWLTCモード燃費はダイハツ ムーヴ キャンバスが19.6~20.6km/Lで、スズキ ワゴンRスマイルは22.5~25.1km/L。この点についても、ワゴンRスマイルのほうが有利となっています。

【ラウンド4:どっちが安全?】ムーヴ キャンバスも悪くはないが、「後退時ブレーキサポート」が付くワゴンRスマイルがやや優勢

先進安全装備(運転支援システム)は、両者とも充実しています。

ダイハツ ムーヴ キャンバスは、2018年8月の一部改良で衝突回避支援システム「スマートアシストIII」を全グレードで標準装備化。「G“メイクアップSA III”」と「X“リミテッド メイクアップSAIII」にパノラマモニター対応純正ナビ装着用アップグレードパックを標準装備し、グレード名を「G“メイクアップ リミテッドSA III”」「X“メイクアップ リミテッドSA III”」に変更しています。

いっぽうのスズキ ワゴンRスマイルも、予防安全装備をパッケージ化した「スズキセーフティーサポート」を全車に標準装備。さらに上位グレードはアダプティブクルーズコントロール(全車速追従機能付き)やカラーヘッドアップディスプレイ、標識認識機能からなる「セーフティープラスパッケージ」も装備されます。

そのうえで両者の内容を比較しますと、後退時にも衝突被害軽減ブレーキを作動させる「後退時ブレーキサポート」が採用されているスズキ ワゴンRスマイルのほうが、より安全であるとは言えるでしょう。

スズキ ワゴンRスマイルは後退時ブレーキサポートのほか、セーフティプラスパッケージ装着車ではアダプティブクルーズコントロールも搭載される。ただ、市街地での使用がメインになるはずのこの車には要らない装備かも?

【ラウンド5:どっちがおしゃれ?】こればっかりは好みの問題だが、インテリアはムーヴ キャンバスのシンプルさが光る

ここ関しては「人それぞれの好みやセンス次第」というのが最終結論となりますが、もしも筆者個人の主観を述べさせていただくなら「互角!」ということになります。

両者ともカワイイ感じのフォルム&ディテールですが、過剰に甘すぎる、いわゆる「お仕着せの女性向け車」みたいなテイストはなく、性別不問で乗りこなせるデザインに仕上がっています。また両者とも、非常にしゃれた2トーンカラーを選ぶことができます。

そのうえで――これも筆者個人の主観にすぎないのですが――内装のデザインテイストは、ダイハツ ムーヴ キャンバスのほうがシンプルでしゃれているようには思います。もちろん、これとは違う印象を受ける人も多いとは思いますが。

ワゴンRスマイルの運転席まわり。

こちらはムーヴ キャンバス。

【ラウンド6:どっちがお得?】おおむね同等だが、ワゴンRスマイルのほうが少しだけ高い

ある意味いちばん気になる「価格」は、特別仕様車を除いた標準で考えるとダイハツ ムーヴ キャンバスが143万~171万500円で、スズキ ワゴンRスマイルが129万600~171万6000円です。

しかしモデル全体で比較しても今ひとつピンとこないため、2WDの最上級グレード同士で比較してみましょう。

●ダイハツ ムーヴ キャンバス G “メイクアップ リミテッド SA III”|158万4000円
●スズキ ワゴンRスマイル HYBRID X|159万2800円

1万円ちょいの違いはありますが、大まかに言うなら「だいたい同じぐらい」ということになるでしょうか。

ちなみにORIXカーリース・オンラインの「いまのりくん 5年契約」の月額リース料は、

●ダイハツ ムーヴ キャンバス G “メイクアップ リミテッド SA III”|3万3440円~
●スズキ ワゴンRスマイル HYBRID X|3万5970円~
となっています。

【判定】設計年次が新しいワゴンRスマイルが全般的に優勢だが、「好みの問題」でムーヴ キャンバスを選ぶのも悪くない

以上の検討から判明した事実は、おおむね下記のとおりであると言っていいでしょう。

●使い勝手ははおおむね互角だが、背の高さと荷室の使い勝手はワゴンRスマイルが若干有利
●走行性能もおおむね互角だが、全体しっかり感はワゴンRスマイルが若干上
●WLTCモード燃費もワゴンRスマイルが上
●運転支援システムの内容も、ワゴンRスマイルが若干上
●おしゃれ感はほぼ同等。
●価格もほぼ同等だが、ワゴンRスマイルのほうが少々高い

全般的に「スズキ ワゴンRスマイルのほうが若干上」という結論になりますが、これはワゴンRスマイルの設計は約5年分新しいから」ということに尽きるでしょう。5年というのは車の設計においてはかなり長い年月ですので、5年分新しいワゴンRスマイルの細部のほうが性能的に上というのは、ある意味当然です。

それゆえ、諸性能だけで選ぶのであれば「スズキ ワゴンRスマイルがおすすめ」という結論になるわけですが、この種の車というのは性能だけで選ぶものでもないはず。「デザイン」や「たたずまい」の良し悪し(というか好み)も、性能以上に重要な検討項目となるはずです。

となれば、諸性能が圧倒的に劣っているわけではないダイハツ ムーヴ キャンバスのたたずまいのほうがお好きであるならば、そちらを選ぶのも大いにアリであることは間違いありません。またそういった理由で選ぶ人が多く、そういった理由で選ぶ価値も大であるからこそ、登場から5年以上が経過したダイハツ ムーヴ キャンバスが、真新しいスズキ ワゴンRスマイルに匹敵するほど売れているのでしょう。

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2022年3月14日
  • <更新日>2022年3月14日
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