「ホンダ フリード」vs「トヨタ シエンタ」すべてが何かとジャストで便利なコンパクト・ミニバン編【同クラス人気車対決】

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近年は「SUV」が一番人気のジャンルになりつつありますが、ファミリーで車を使うのであれば、合計3列のシートに最大7~8人が乗れて、後部ドアが両サイドともスライド式で……という「ミニバン」こそが、なんだかんだで一番便利に使える選択肢です。

そんなミニバンのなかでは、豪華なLサイズミニバンである「トヨタ アルファード」や、5ナンバー級のサイズである「トヨタ ヴォクシー」や「トヨタ ノア」がよく売れているものの、「我が家の場合はもう少し小さめなミニバンのほうが好ましい」というご家族もたくさんいらっしゃいます。

そんなファミリーに人気が高いのが、「少しだけ小さめな5ナンバーサイズミニバン」であるホンダ フリードとトヨタ シエンタです。

どちらもそれぞれナイスな車で、トヨタ シエンタは2022年8月にフルモデルチェンジを受けたことでよく売れており、ホンダ フリードも登場から約6年半が経過しているにもかかわらず、相変わらずよく売れています。

そしてこの2台は、デザインこそまったく違いますが、それ以外のサイズやパワーユニットの種類、価格などはけっこう似通っているため、どちらを選べばいいのか、正直迷うところです。

どちらも実用性と経済性に優れるコンパクトミニバンであることは間違いないのですが、我々ユーザーは、もしも手に入れるとしたら両方ではなく「どちらか一台」に限定せざるを得ません。

その場合、わたしたちはどちらを選べばいいのでしょうか? さまざまな観点から比較してみることにしましょう。

【ラウンド1:どっちが売れている?】モデルチェンジ直後のシエンタが売れているが、フリードも大健闘

まずは「今、実際どちらが売れているのか?」というデータを見てみます。

日本自動車販売協会連合会が発表した直近のデータによれば、ホンダ フリードとトヨタ シエンタの販売台数は下記のとおりとなっています。

●2022年9月~12月累計
ホンダ フリード|2万5037台
トヨタ シエンタ|3万8039台

●2023年1月単月
ホンダ フリード|5808台
トヨタ シエンタ|1万1038台

2022年9月に新型トヨタ シエンタの納車が始まったため、まずは同年9月から12月までの期間で両者の販売台数を比較してみました。それによると、やはりフルモデルチェンジの効果によりトヨタ シエンタの販売台数のほうが明らかに多く、ホンダ フリードのおおむねおおむね1.5倍となっています。直近の単月データである2023年1月の販売台数は、新型シエンタがフリードの約1.9倍です。

これをもって「トヨタ シエンタのほうが圧倒的に売れている!」と結論づけることもできますが、実際はそこまで簡単な話ではないでしょう。

こちらが2022年8月に発売された新型トヨタ シエンタ

ここは「トヨタの主力車種のひとつであるシエンタがフルモデルチェンジを受けた直後の時期にもかかわらず、登場から6年以上経過しているホンダ フリードが月平均6000台以上のペースで売れ続けているのが、むしろすごい!」と見るべきでしょう。

それゆえここでの結論は、「より売れているのは新型トヨタ シエンタだが、ホンダ フリードも根強く売れ続けている」というものになります。

トヨタ シエンタ

【ラウンド2:どっちが広い?】広さはおおむね似ているが、3列目シートの使い勝手に一長一短あり

お次はボディサイズや車内の広さ、使い勝手などを比較してみましょう。

ボディサイズは、微妙な違いはありますが「おおむね同じぐらい」といえます。

●ホンダ フリード|全長4265mm×全幅1695mm×全高1710mm
●トヨタ シエンタ|全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mm

ちなみに両モデルとも3列シート仕様と2列シート仕様が用意されていて、フリードの2列5人乗り仕様は「フリード+」、シエンタの2列5人乗り仕様はシンプルに「5人乗り」と表記されています

で、ボディの外寸はおおむね同じぐらいな両者ですが、室内寸法は少々異なっています。

●ホンダ フリード|室内長3045mm×室内幅1455mm×室内高1275~1285mm
●トヨタ シエンタ|室内長2545mm×室内幅1530mm×室内高1300mm

●ホンダ フリード+|室内長2310mm×室内幅1455mm×室内高1275~1285mm
●トヨタ シエンタ(5人乗り)|室内長2030mm×室内幅1530mm×室内高1300mm

ホンダ フリードの車内。カタログデータでの室内長は新型シエンタより50cm長い

こちらは新型トヨタ シエンタ(7人乗り)の車内スペース

室内長(インパネの先端からリアシート後端までの距離)の計り方はメーカーによってまちまちですので単純には比較できないものの、ホンダ フリードおよびフリード+のほうが余裕ありです。ちなみに2列目シートの形状は、トヨタ シエンタがベンチシートのみであるのに対し、ホンダ フリードは6人乗りとなる「キャプテンシート」を選ぶこともできます。

3列シート車同士で比べた場合、両者の3列目シートの収容方法は大きく異なります。

ホンダ フリードは、3列目の座面を5:5分割で左右に跳ね上げる格納方式を採用しています。簡単であり、リアゲート開口部の地面からの高さも480mmと低めでもあるため、使い勝手はきわめて良好といえます。ただ、左右に跳ね上げた3列目シートにより運転中の後方視界がやや遮られ、荷室として使える容積も若干減るという弱点はあります。

いっぽうのトヨタ シエンタの3列目シート格納はダイブダウン式。2列目シートの下に格納されるので、出っ張りのないラゲッジ空間を作ることができます。ただ、3列目の格納にはやや手間がかかる(2列目シートを浮かせる必要がある)という弱点もあります。

3列目シートは左右に跳ね上げて格納するホンダ フリード。パタンと簡単にたためるが、荷室の容量はその分だけ若干少なくなる

3列目シートじゃ2列目の下に収容する新型トヨタ シエンタ。荷室を広く使うことができるが、収容に若干の手間はかかる

このあたりは、両者とも容量と利便性のトレードオフ(何かを得ると、別の何かを失うということ)であり、「優劣」とはまたちょっと違う話です。

ホンダ フリード

【ラウンド3:走行性能と燃費は?】特にハイブリッド車はトヨタ シエンタに分がある

お次は「走行性能」です。

用意されるパワーユニットは、ホンダ フリードが1.5Lガソリンまたは1.5Lガソリン+モーターのハイブリッドで、トヨタ シエンタも同じく1.5Lガソリンまたは1.5Lガソリン+モーターのハイブリッドを用意しています。

ホンダ フリード

こちらは新型トヨタ シエンタ

先代のトヨタ シエンタはホンダ フリードとおおむね同様のパワーおよび“パワー感”でしたが、新型となったシエンタは動力性能が向上し、なおかつ車重もフリードより50kgほど軽いため、走行フィールはトヨタ シエンタのほうが活発であると感じられます。また乗り心地や走行中の安定感に関しても、新世代プラットフォームに刷新されたトヨタ シエンタのほうが若干上回っているといえるでしょう。

では「燃費」はどうかというと、3列シート車のWLTCモード燃費はそれぞれ下記のとおりです。

●ホンダ フリード(ガソリン・2WD)|17.0km/L
●トヨタ シエンタ(ガソリン・2WD)|18.3km/L

●ホンダ フリード(ハイブリッド・2WD)|20.9km/L
●トヨタ シエンタ(ハイブリッド・2WD)|28.2~28.5km/L

ガソリン車の燃費差は「誤差の範囲」と言ってもいいぐらいですが、ハイブリッド車はシエンタのほうが優秀です。

また最小回転半径も、ホンダ フリードが5.2mであるのに対して新型トヨタ シエンタは5.0mですので、狭い場所での取り回し性能も、新型シエンタのほうが若干有利といえるでしょう。

【ラウンド4:どっちが安全?】両者とも運転支援システムは充実しているが、新しい分だけシエンタが若干有利

先進安全装備(運転支援システム)は、ホンダ フリードは「Honda SENSING」が全車標準装備。トヨタ シエンタ、先代は正直やや弱い部分もあったのですが、新型では「Toyota Safety Sense」が全車標準装備となり、フリードには設定自体がない「ブラインドスポットモニター」も中間グレード以外は標準装備であり、廉価グレードである「X」にもメーカーオプションとして装着可能です。

そのため、ここについては「ホンダ フリードも十分健闘しているが、設計が新しいトヨタ シエンタのほうがさすがにやや上である」というのが妥当な結論でしょう。

新型シエンタは「Toyota Safety Sense」が全車標準装備で、ブラインドスポットモニターも最廉価グレード以外には標準で装備される

トヨタ シエンタ

【ラウンド5:どっちがお得?】価格はおおむね同じ。少し高いシエンタのほうが買い得感は強いかも?

ある意味いちばん気になる「価格」は、モデル全体で考えるとホンダ フリードが227万5900~327万8000円で、トヨタ シエンタが195万円~310万8000円なわけですが、全体で比較しても今ひとつピンとこないため、類似する主要グレード同士で比較してみましょう。

【ガソリン車のスタンダードグレード】
●ホンダ フリード G 2WD(7人乗り)|229万7900円
●トヨタ シエンタ G 2WD(7人乗り)|234万円

【ハイブリッド車のスタンダードグレード】
●ホンダ フリード HYBRID G 2WD(7人乗り)|265万5400円
●トヨタ シエンタ HYBRID G 2WD(7人乗り)|269万円

価格設定は「トヨタ シエンタのほうがちょっと高いが、基本的には似たようなもの」と言っていいでしょう。シエンタの「ちょっと高い」という点も、前述したプラットフォームの新しさはブラインドスポットモニターなどのことを考えれば納得の範囲というか、「むしろ割安かも?」と思えるかもしれません。

【判定】設計が新しいシエンタの勝利だが、フリードも相変わらず悪くない選択

以上のとおり、ホンダ フリードとトヨタ シエンタは「おおむね似ているし、おおむね互角ではあるのだが、さすがに新しいだけあって、新型トヨタ シエンタのほうが明らかに優れている点もいくつかある」という結果になりました。

3列目シートや荷室の使い勝手に関しては、優劣というよりも「好みや使い方次第で評価は変わる」といった話でしょう。また全体としてのデザインも、トヨタ シエンタには「欧州車的なおしゃれ感」があって、ホンダ フリードは「良く言えばオーソドックス。あえて悪く言うならちょっと地味」というニュアンスですが、ここも人それぞれの好みの問題です。

そのうえであえて判定を下すとすれば、「先進安全装備がより充実していて、走行性能と走行フィールも向上した新型トヨタ シエンタが、さすがにやや優勢。とはいえ“オーソドックス”という、ほかにはなかなかない美点が光るホンダ フリードも、相変わらず悪くない」ということになるでしょう。

ひとつの参考意見として、お役立ていただけるなら幸いです。

SUV風味のフリードである「フリード CROSSTAR」

新型トヨタ シエンタのリアビュー

トヨタ シエンタ

ホンダ フリード

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2023年4月5日
  • <更新日>2023年4月24日
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