【プロが選ぶ今おすすめの一台】ダイハツ ミラ イースは営業車としてだけ使うのはもったいない、実は優れたパーソナルカー!(MJブロンディ)

当ウェブサイトを見ていたところ、新車の「人気ランキング」で、ダイハツ ミラ イースが1位に輝いていた(原稿執筆時点)。

「ええっ、ミラ イースが1位!?」

思わずそう叫んでしまった。

第2位はスズキ ジムニー(同)。どちらも軽自動車だが、性格は180度異なる。

ジムニーは本格派オフロード4WD。日常的には使いきれない、突出した性能を持っている。一方のミラ イースは、もっともベーシックな軽自動車。日常的に使うのにもっとも適した、もっとも安価でもっとも燃費のいい軽自動車だ。

最近、スズキ アルトが新型にフルモデルチェンジし、安さの割に中身が充実していると評判になっている。中でももっともベーシックな「A」の2WDモデルは、94万3800円で、衝突被害軽減ブレーキから何から標準装備。ボディが軽いから加速も良く、過剰な性能を求めないなら、最高の一台だと評価されている。

がしかし当サイトでは、新型アルトではなく、5年前に登場したミラ イースが1位なのだ。「なぜ?」と思いつつ、私は「さすが、わかってらっしゃる!」というような思いを抱いた。確かにアルトは素晴らしいが、しかしミラ イースのほうが、さらに少しだけいいのではないか……と考えていたからだ。

こちらが超ベーシックな軽自動車である「ダイハツ ミラ イース」

ライバルと諸性能はほぼ同じだが、ミラ イースのほうが「少しだけいい」と思う

ダイハツ ミラ イースとスズキ アルトはガチのライバルなので、性能も装備もほぼ互角。違いと言えば、「アルトは全グレード衝突被害軽減ブレーキが標準装備だが、ミラ イースには付かないグレードもある」という点ぐらいしかない。それも、単に新型アルトの発売時期が昨年12月で、すでに新型車の衝突被害軽減ブレーキ標準装備が義務化されていたから、に過ぎない。ミラ イースだって、ほとんどのグレードに標準装備されている。

その他、クルマの大きさや重さや燃費はほとんど同じ。微妙な差はあるが、ミクロの差に過ぎない。

価格は、もっともベーシックなグレード同士で比べると、前述のようにアルト「A」が94万3800円。一方、ミラ イースの衝突被害軽減ブレーキ付きの最廉価グレード「B“SAⅢ“」は、92万6200円。1万7600円だけミラ イースのほうが安いが、これまたあってないような差だ。

では私が「ミラ イースのほうが少しだけいい」と思っている理由は何かというと、外観デザインだ。

ミラ イースの鋭いボディエッジはアウディにも劣らない?

新型スズキ アルトのデザインは、全体に丸みを帯びていて、かわいらしいと言えばかわいらしいが、あまりにもホンワカと人畜無害であるように感じられる。

一方のダイハツ ミラ イースの外観デザインは、アルトとは反対に直線的で、ボディの角は鋭くエッジが立っている。デザイン的にそれほど素晴らしいわけではないが、全体に気品とプライドが感じられる。ボディサイズはアルト同様最小クラスだが、どこか「気概」のようなものを秘めているのだ。

よく見ると、実はけっこうエッジが立っているダイハツ ミラ イースのボディ

ミラ イースのボディエッジの鋭さに関しては、5年前の登場時、大いに感心した。クルマの鉄板の角を鋭く折り曲げるのは、生産技術的になかなか難しいことだからだ。

鉄板には弾性があるから、一度プレス機で折り曲げても、しばらくすると少し元に戻って、折り目が鈍くなってしまう。ミライースのような鋭いボディエッジを実現するのは、20世紀中はほとんど不可能だった。21世紀に入って、ドイツの高級車が「熱間プレス成形」という技術を導入し、初めて可能になった。

熱間プレス成形とは、金型内の部品を高温の柔らかい状態で成形し、そして急冷する。こうすることで高い強度と複雑な形状、鋭いエッジラインが実現できる。

この熱間プレス成形を最大限利用して、高級感のあるデザインを具現化した代表的ブランドが、ドイツの高級車アウディだ。07年に登場したアウディ A5クーペは、熱間プレス成形によって、ボディサイドにシャープに波打つ美しいエッジラインを描き、自動車業界に衝撃を与えた。その後アウディのほぼすべてのモデルが、ボディの鋭いエッジで高級感を演出している。

ダイハツ ミラ イースが登場したのは5年前の2017年。つまりダイハツは、アウディに遅れること10年で、アウディに遜色ない鋭いボディエッジを実現したのである。90万円台で! これは驚くべきことだ。私はミラ イースと初対面したとき、「ダイハツはアウディに追いついた!」とつぶやいたものである。

ミラ イースなら周囲の風景の中に埋没しない?

もちろん新型スズキ アルトは出たばかりの新型車だから、新しい分、ダイハツ ミライースより性能的に上回っている部分もあるだろう。ただ、その差は間違いなく小さい。同時に乗り比べて比較したわけではないので、どこがどうアルトがミライースに勝っているか正確には判定できないが、メカ的にはどっちつかずくらいの差しかない。

となれば、勝負は見た目で決まってくる。私は見た目に関しては、新型アルトよりミラ イース支持派だ。ミラ イースなら、アルトで経験したような「周囲のクルマの中にあまりにも埋没してしまう」ことはない……とまでは言えないが、多少は少ないのではないだろうか。

ミラ イースのデザインは、「山椒は小粒でピリリと辛い」というイメ-ジを抱かせる。乗っているドライバーには、キビキビと取引先に向かうピリッとした営業マンが多い気がする。あくまでイメージだが。

本音を言えば、ミラ イースの需要は第一に営業車であり、第二に地方の高齢者ではないだろうか。当サイトの場合は、一時的な(?)営業車需要によって、ミライースが第1位に躍り出たのだろう。

しかし、過剰な広さや過剰な装備、過剰に突出した性能を求めないなら、ミラ イースはパーソナルカーやファミリーカーとして十二分に通用する。

小ぶりな軽自動車ゆえ、さすがに「広い!」と感じることはないが、人が普通に乗る分にはまずまず十分な居住スペースは確保されている。

狙い目グレードは何かと好バランスな「B“SA III“」

ミラ イースの室内は十分に広い。さすがに4名乗車時にはラゲッジ容量が不足するが、そこは工夫(ルーフキャリアを使うなど)でなんとかなる。装備も必要にして十分。エアコン、パワステ、集中ドアロックはもちろんのこと、絶対欲しい装備は、ほとんどすべて標準で付いている。

ベーシックグレードの「B“SA III“」の場合、ヘッドライトはLEDではなくハロゲンだが、それで何の不足があるだろう? オプションで付けたい装備と言えば、後席のヘッドレスト(1万1000円)ぐらいだ。スマホがあればナビだっていらない。ボディが小さくて車両感覚をつかみやすいから、バックモニターもいらない。最低限のオーディオを付ければそれで十分だ。

私がミラ イースを買うなら、グレードは当然「B“SA III“」。ボディカラーは黒を選ぶ。ホイールは純正のスチールで十分。それをスプレー塗料で黒く塗り、真っ黒なミライースに仕上げて、ある程度の迫力感をまといつつ、乗ってみたい。

それはおそらく、車好きが抱くさまざまな煩悩の先にある解脱の境地、極楽浄土ではないだろうか。

こちらがMJブロンディ氏イチ推しの「B“SA III”」

執筆者
MJブロンディ(清水草一)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動。
  • <記事掲載日>2022年6月10日
  • <更新日>2022年6月10日

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