クルマ購入のツボを徹底解説!
クルマの買い替えは走行10万kmがベストなのか?

車の寿命=10万km説には根拠も意味もない?

「この車も走行10万kmを超える頃には、おおむね“寿命”を迎えるんだろうな……」

まだまだ新しいピカピカの愛車を眺めながら、そんな感慨におそわれている人もいるかもしれません。

誰が言い出したことかわかりませんし、そんな法律や決まりもいっさいないはずなのに、なぜか人は「乗用車の寿命はだいたい10万km」と想定する場合が多いものです。そして愛車の走行距離が10万kmを迎える頃になると「そろそろ次の車を買わないとまずいかも……」というニュアンスで、買い替えを検討し始めるのです。

しかし車の寿命というのは本当に「10万km」なのでしょうか?

言い方を変えると、「車の買い替えタイミング」は本当に10万kmがベストなのでしょうか?

一概には言えない問題ですが、「車の寿命=10万km説には根拠も意味もあまりない」というのが、根本的な結論となります。

海外では460万km走ったベンツのタクシーも

そもそも、最近の車は走行10万kmを超えても普通に動くケースが大半です。

一般財団法人 日本自動車検査登録情報協会が発表している「車種別の平均使用年数推移表」によれば、令和3年(2021年)3月末の乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.87年。前年に比べて0.36年長期化しており、6年連続で増加を続けています。また10年前の平成23年(2011年)と比べると、乗用車の平均使用年数は1.44年延びています。

つまり、乗用車というのは平均的な場合でも新車から14年近く乗られていて、なおかつ乗られる期間は、この10年でどんどん長くなってきている――ということです。

1年間あたりの走行距離というのは人それぞれですが、都市部に多い「年間8000km」のペースで13.87年間乗れば、走行距離は約11万kmに達します。そして地方都市に多い「年間1万km以上」のペースで乗用車を使うなら、13.87年での走行距離は13万8700km以上ということになります。

平均でこれですから、なかにはもっともっと長い距離を走る乗用車もたくさんあるでしょう。
筆者の知人にも走行30万kmを超えた車に乗り続けている人は何人かいますし、過去には「メルセデス・ベンツのタクシーが走行460万kmを突破した!」なんてニュースが海外から届いたこともありました。

要するに乗用車というのは、しっかりとメンテナンスさえ施してあげれば、10万km以上の距離をごく普通に走りきることができるものなのです。それゆえ筆者は本稿の最初のほうで「車の寿命=10万km説には根拠も意味もあまりない」と申し上げた次第です。

ただし走行5万km前後で1回目の「メンテの山場」がやってくる

とはいえ……乗用車が10万km以上の距離を無事に走り切るには“条件”があります。

10万kmを快調なまま走るには、まさに先ほど申し上げたばかりの「しっかりメンテナンスする」という条件を満たす必要があるのです。

自動車メーカーの工場から出荷された新車は、まぁ「初期トラブル」みたいなものもたまに出たりはするのですが、基本的には3万kmか4万kmぐらいまでは「ほぼノートラブル」で使うことができます。この時期までは「自分では1回もボンネットを開けたことがない」なんて人も多いはずです。

しかし車という機械は走行5万kmぐらいのタイミングで、さまざまな消耗部品が「最初の要交換時期」を迎えます。具体的には「タイヤ」「ファンベルト」「ブレーキパッド」「ドライブシャフトブーツ」等々です。

仮にこれらの交換をしないとしても、車というのはいちおう動くのですが、そのままでは早晩壊れてしまいます。そしてそもそも、すり減ったタイヤや、厚みが1mmを切りそうなブレーキパッドを付けたままの車で公道を走るのは大変危険。車検も通りません。そのため、このあたりの部品は走行5万kmという「最初の山場」を目安に、必ず交換しなければならないのです。で、その交換にはまあまあのお金がかかります。

走行10万kmを超えるとさらに高い山が現れる

そして車という機械はおおむね走行10万kmの時点で「2回目の山場」を迎えます。

5万kmの時点で交換したものをもう1回交換してあげる必要があるのに加え、「プラグコード」や「タイミングベルト(※使っていない車種もあります)」「ブレーキホース」「ラジエターホース」「ハブベアリング」等々の部品が、「まだ大丈夫かもしれないが、そろそろ寿命を迎えるのは確実」となるのが、走行10万kmまたは新車時から10年というタイミングなのです。

そして当然、これらの交換にはけっこうなお金がかかり、特にハブベアリング(ホイールと車体が接続される部分にある部品)の交換には――車種にもよりますが――10万円ほどかかる場合が多いでしょう。筆者にも経験がありますが、けっこう痛い出費です。

ここまで申し上げてきたとおり、「車の寿命」は決して10万kmではありません。適切な部品交換と整備さえ行えば20万kmでも30万kmでも走れますし、極端な話としては「100万km」だって、決して夢物語ではないでしょう。

しかしそれには、けっこうなお金と手間が確実にかかります。

車と普通に付き合う分には「5万km以内での買い替え」が賢いかも

このほか、10万km(時間にして約10年間?)を走るうちには世の中のデザイントレンドも大きく変わりますので、端的に言ってしまうと「10年前の車はダサく見えてしまう」という問題もあるでしょう。

洋服も30年ぐらい前のものは「逆におしゃれ!」だったりしますが、10年前の服というのは中途半端に古くさいデザインである場合が多いため、あまり着る気になれないというのが正直なところ。そして車のデザインでも、それと似たことは言えるのです。

また、技術的な面で付け加えると、ここ数年で自動ブレーキに代表される先進安全装備が著しく進化しました。そういった装備がついたクルマの事故率の低さも明らかになっています。このあたりも新しい車をおすすめする大きな理由です。

「クルマの買い替えは10万kmがベストなのか?」という命題に対する最終的な答えは、「車の寿命は10万kmや10年ではない。しかし、そこまで乗り続けるためのコストや手間をかけるだけの“愛”や“情熱”は特にないのだとしたら、5万kmという最初の山場を超えないあたりで別の新車に乗り替えるのが賢い」ということになるでしょう。

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
  • <記事掲載日>2022年6月10日
  • <更新日>2022年6月10日

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