本当に怖い「あおり運転」その定義から罰則、回避策までプロが解説!【2023年最新版】

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テレビニュースや新聞などでは一時期ほどには取り上げられなくなりましたが、動画投稿サイトなどを見る限りでは、今もなお「あおり運転」によるトラブルや被害は後を絶たないようです。

誰がどう考えても「あおり運転」の被害者にはなりたくありませんし、具体的な被害はなかったとしても、とにかく不快で怖いのがあおり運転ですので、可能な限り遭遇したくないものです。

そこで、「どうすればあおり運転の被害を受けずに済むか?」といった考察を中心に、あおり運転の定義や罰則規定の紹介などを含め、さまざま考えてまいります。

そもそも「あおり運転」とはどういうものか?

まずは「あおり運転とは何か?」という定義から話を始めましょう。令和2年6月30日施行の道路交通法で「妨害運転罪」が創設され、他の車両の通行を妨害する目的で一定の違反行為を行うと“厳罰”に処されるようになりました。そこで言う「一定の違反行為」とは、以下の10類型を指しています。

●対向車線からの接近や逆走
●不要な急ブレーキ
●車間距離を詰めて接近
●急な進路変更や蛇行運転
●左車線からの追い越しや無理な追い越し
●不必要な継続したハイビーム
●不必要な反復したクラクション
●急な加減速や幅寄せ
●高速道路などの本線車道での低速走行
●高速道路などにおける駐停車

以上のような妨害運転を、交通の危険を生じさせるおそれのある方法により行った場合は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。そして運転免許は取り消しとなり、その後2年は免許を取得することができなくなります。また妨害運転によって重大な交通事故につながる危険を生じさせた場合は、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられて運転免許取り消しのうえ、その後3年は免許を取得できなくなります。

さらに、あおり運転によって人身事故が起きた場合は「危険運転致死傷罪」が適用され、人を負傷させた場合は懲役15年以下、死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役に処されます。またこれら以外に「暴行罪」や「傷害罪」「脅迫罪」などの罪に問われることもあります。

あおり運転に遭遇してしまったときの対処法は?

こういった妨害運転をする方には極力近寄らないようにしたいわけですが、不運にも遭遇してしまい、なおかつ自分に対して「明白なあおり運転」をされてしまった場合には、どう対処すればいいのでしょうか?

具体的には、おおむね以下のような対応を取るべきとされています。

対処法① 落ち着いていつも通りの運転をし、安全な路肩やサービスエリアなどに停車する

あおられたからといって自分も速度を上げたり、後ろにばかり気を取られていると、注意力が散漫になって事故につながるおそれがあります。

一般道であおられた場合は、まずは「安全運転」に集中し、安全な路肩や空きスペースなどを見つけたら、そこに落ち着いて停車させてください。できれば「人目がある場所」が望ましいですし、もちろん近隣の警察署や交番に助けを求めてもかまいません。

相手は「車から降りてこい!」的に恫喝してくる場合もありますし、気が済んで走り去ることもありますが、いずれにせよいったん走行するのをやめて、安全で人目がある場所に停車してください。

ただし高速道路を走行中の場合は、本線上はもちろん路肩であっても後続車に追突される危険があるため、必ずサービスエリアやパーキングエリアなどまで移動してから停車します。

対処法② 車のドアをすべてロックしたうえで110番通報をする

安全な場所に停車した後、あおり運転をしてきた相手に対しての苛立ちや、あるいは「自分は何も間違った運転はしていない!」との自信からでしょうか、自ら対処しようとしたり、相手に立ち向かっていってしまう人もいます。しかしひどいあおり運転をするような人間とは、まともな会話や交渉が成立するはずがないのです。それは「無駄な努力」でしかありませんし、大変危険な行為でもあります。

安全で人目のある場所に停車させた後は、まずは必ず車のドアをすべてロックして、車外から直接的な危害を加えられない状態を確保します。そのうえで、相手が立ち去らないようでしたら躊躇なく110番通報して、警察を呼びましょう。もしも同乗者がいれば、走行中でも携帯電話から通報してもらってください。停車後に脅しや挑発を受けても決して相手をしてはいけませんし、不用意に車外へ出てもいけません。警察官が到着するまで車内に待機し、身の安全を確保してください。

乗っている車を蹴られたり傷つけられたりした場合も、車外に出て「やめろ!」と制止するのではなく、ロックした車内からその模様をスマホの動画モードなどで撮影しておきましょう。のちのち効果的な“証拠”になります。またもしもオリックス・カーリースを利用するのであれば、カーナビとバックカメラのほかにドライブレコーダーもコミコミとなる「マル得パック」を選択するのがおすすめとなります。

対処法③ 「新型トヨタ プリウスを入手する」というのも効果的?

新型トヨタ プリウスのZグレードとGグレードには「周辺車両接近時サポート(通報提案機能)」と呼ばれる機能が標準搭載されています。

これは後方の車両が非常に接近してきた場合に、ドライバーに対して警察もしくは専用ヘルプネットへの通報を提案するというもの。事前に携帯電話を車内のディスプレイオーディオとBluetoothで接続していれば、ディスプレイに「お困りですか? 110番通報しますか?」と表示されるため、走行中であっても、ハンドル部分にあるボタンを操作して警察に通報することができます。

また最上級グレードであるZの場合は、メーカーオプションのドライブレコーダーに状況が自動的録画され、専用の記録領域へ保存するという機能も付いています。あおり運転の被害を受けることが決して他人事ではなくなった今の時代、これはなかなか有効な装備だといえるでしょう。

あおり運転されるのを回避するためにできることは?

以上が「もしもあおり運転の被害にあってしまった場合の対処法」ですが、もちろんベストなのは「そもそもあおり運転の被害にあわないこと」です。

それでは、どのように運転すれば「あおり運転の被害にあう可能性」を最大限減らすことができるのでしょうか?

答えは以下のとおりです。

特に急いでないのであれば「左側車線」を走るようにする

教習所で教わった内容はすでにお忘れかもしれませんが、道路の片側に複数の車線がある場合は、基本的には左側(路肩側)が走行車線=普通に走るための車線で、右側(中央寄り)が追い越し用の車線です。

その追い越し車線(中央寄りの車線)をいつまでものんびり走っていると、“あおり運転気質”を持つドライバーが背後に来た際に「オラオラッ! どけよ!」とばかり車間距離を詰められ、そこで気づいて車線を譲ればいいのですが、気づかずそのままゆっくり走っていると相手の怒りに火が着き、悪質なあおり運転を誘発してしまうことがあります。

基本的には左側車線を走るようにして、必要があって右側車線に出た際も、“必要な用事”が済んだらすみやかに左側車線に戻る――ということを心がけるだけで、あおり運転に遭遇する確率を大幅に低下させることができます。

イライラしてそうな車にはサッと道を譲る

上の項目と若干カブりますが、妙に車間距離を詰めてくる車の存在をルームミラーなどで確認したら、何も考えずに(ただし左側方および後方の安全は確認したうえで)サッと道を譲ってしまうようにしましょう。これを「自分の運転のクセ」にしてしまえば、筆者の肌感覚からいうと、あおり運転に遭遇する可能性を9割以上は減らすことができます。

逆に言いますと、運転中にルームミラーなどで後方の状況を確認することを怠りがちなドライバーは、あおり運転に遭遇する可能性を自ら高めているということになります。

「急な割り込み」と思われないような車線変更や合流を心がける

世の中には「急な割り込みをしたい」などと思っているドライバーはひとりもいないことでしょう。しかし、自分としては「急な割り込みではない」と思って行った車線変更や合流などが、相手からは「なんだコイツ、急に割り込みやがって!」みたいに見えてしまうことはあります。

そんな場合でも、ほとんどのケースでは相手方が車内で「チッ!」と毒づくぐらいで済むものですが、運悪く“あおり運転気質”を持つドライバーの前にそうやって入ってしまうと、大惨事の引き金になりかねません。

こういったリスクを低下させるためには、車線変更や合流などに際して「迷ったら、待つ」というクセをつけることが重要です。

「イケるかどうかちょっと微妙なタイミングと車間距離だけど、まあ大丈夫でしょ」というニュアンスで行う車線変更や合流は、運が悪かったり、判断に微妙なミスがあったりすると、事故や「あおり運転の被害」に直結します。道がガラ空きで、明らかにイケる場合は行けばいいのですが、少しでも「微妙かな?」と思ったら車線変更や合流などをやめ、「絶対安全に行える次の機会」を待つというクセをつけるようにしましょう。次の機会を待ったところで、目的地までの所要時間が10分も20分も遅れるわけではありません。

「急な割り込みっぽい状況」を作ってしまった場合はすぐ謝る

とはいえ日常的に車の運転をしていると、そんなつもりはなくても「結果として急な割り込みっぽい状況になってしまった」ということはたまにあります。

そうなってしまったときにも、カチンときてそうな相手ドライバーに対してサッと手を上げるなり、ハザードランプを2~3回点滅させるなりして「ごめん!」という意思を表示すれば、もめごとやあおり運転に発展する可能性はきわめて低くなります。

といいますか、そもそも「自分が急な割り込みっぽい状況を作ってしまった」ということに無頓着で、ぜんぜん気づいていないドライバーも一部にいるのかもしれません。そういったドライバーはもめごとやあおり運転、最悪の場合には「人身事故」に遭遇やすい体質を持ち合わせていると言っていいでしょう。

運転中はくれぐれも、自分の目とミラーで「周囲の状況」をしっかり把握するようにしたいものです。

あおり運転の「加害者」にならないために心がけることは?

ここまでは「あおり運転の被害にあわないようにするには?」という視点で話を進めてまいりましたが、世の中には「自分があおり運転をしてしまいそうで怖い……」と考えてらっしゃる方も、少数ながらいるはずです。

もしもそういった不安があるならば、取れる対策は以下の3つでしょう。

とにかく時間に余裕を持つ

常日頃からイライラしていて、他人に暴力をふるったりしている粗暴な人は別として(それはもう対策の取りようがありません……)、「車のハンドルを握っているときだけ、妙にイライラしてしまうことがある」という人はけっこういるものです。

そのイライラを完全に消滅させることができるかどうかはさておき、「車で移動する際は、とにかく時間の余裕をもって行動する」というクセをつけると、追い越し車線に低速で居座るドライバーがいても、急な割り込みなどをされても、怒りがいきなり沸点に達するリスクを大幅に減らすことができます。「ま、いいか。別に急いでないし」と思えるのです。

カーナビなどに表示される予想所要時間に、最低でも30分はプラスしてスケジュールを組み立てるといいでしょう。

とりあえず6秒間ガマンする

諸説ありますが、一般的には「どんなに激しい怒りでも、感情のピークは長くて6秒間」と言われています。その6秒さえ乗り切れば、衝動的な行動を起こしにくくなるわけです。運転中に怒りを感じて頭に血が上ったと思ったら、いきなり何かをするのではなく、とにかく「6秒」待ってみることを意識する。絶対に万能な方法ではありませんが、それなり以上の効果はあるはずです。

怒りの対象と距離をとる

「6秒間ガマンする」というアンガーマネジメントで、多くの場合は衝動的な怒りを沈められるかと思いますが、とはいえ怒りの対象物である「追越車線をいつまでも遅すぎる速度で走っている車」や「急な割り込みをしてきて、礼も謝罪もしないドライバー」が視界に入っている限り、いつまでも怒りの感情が持続してしまう――ということも考えられます。

そんな場合には「物理的な距離を取る」という方法、つまり自分の視界から怒りの対象物を消してしまうのが、実は一番だったりします。6秒ルールに加えて「視界から消してしまう」という術を併用すれば、衝動的な怒りの感情の9割以上は、おおむね消失させることができるでしょう。

といっても、例えば片側2車線の高速道路の追越車線に居座っている低速車を左側車線からズバッと抜いてしまうのは違反ですし、そもそもかなり危険です。

そういった際におすすめとなる手法は「とりあえず休憩する」という作戦です。一般道であれば駐車場のあるコンビニなどに入り、おいしいコーヒーでも買うことにしましょう。高速道路であればサービスエリアかパーキングエリアに入り、ソフトクリームなどをなめながら休憩しましょう。そうすれば先ほどまでの怒りなど、ほぼほぼ雲散霧消することは間違いありません。

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2023年4月5日
  • <更新日>2023年4月5日